プロゲストーゲン(progestogen)とは、黄体ホルモン、ゲスターゲン、ゲスタージェン、ジェスタージェンとも呼ばれる物質であり、子宮内膜に着床性増殖を引き起こす働きがあります。
プロゲストーゲンは女性の体内で排卵が起こると黄体から約2週間にわたって分泌され、その後分泌されなくなります。そして、プロゲストーゲンの低下したことを視床下部が検知すると、脳下垂体が刺激され、次の排卵が起こる仕組みとなっています。女性の体内では、このサイクルが4週間程度で繰り返されています。
プロゲストーゲンは肝臓で不活化され、大部分は消化管内、一部は尿中に排泄されます。
1) プロゲスチン(Progestin)
① プロゲスチン(Progestin)とは
プロゲスチン(Progestin)は、体に自然に存在する黄体ホルモンであるプロゲストーゲンを人工的に合成して作られた物質です。主に避妊用ピルや子宮内膜症の治療、ホルモン療法に使用されます。
プロゲスチン(Progestin)は、プロゲストーゲンのような効果を引き起こすために、体内のプロゲステロン受容体と相互作用するように作られています。身体の天然プロゲステロンが行う作用の一部を行うことができます。たとえば、プロゲスチンは子宮内膜に変化を引き起こし、子宮内膜の過剰な増殖を防ぎ、受精卵の着床と妊娠初期の継続をサポートします。
しかし、プロゲスチン分子の化学構造は、天然のプロゲストーゲンとは異なるため、身体のプロゲステロン受容体に結合する方法に、自然の黄体ホルモンとは異なる影響を与えます。
参照:
https://womenlivingbetter.org/progesterone-and-progestins/
https://www.larabriden.com/the-crucial-difference-between-progesterone-and-progestins/
② プロゲスチンの種類
プロゲスチンには,開発された順に第一世代:ノルエチステロン、第二世代:レボノルゲストレル、第三世代:デソゲストレル、第四世代:ドロスピレノンの4種類があります.
それぞれには、以下の特徴があります。
・第一世代:ノルエチステロン(Norethindrone)
世界初のプロゲスチンである、優れたホルモン活性が認められています。また、30年以上にわたって服用されてきたという臨床実績から安全性が高く評価されており、現在でも低用量ピルの成分として幅広く使用されています。
・第二世代:レボノルゲストレル(Levonorgestrel)
第二世代のレボノルゲストレルは、ノルエチステロンのメチル基をエチル基に置換することで開発されました。受容体との強い結合が得られるようになったため、より強いプロゲストーゲン作用が得られるようになりました。
・第三世代:デソゲストレル(Desogestrel)
デソゲストレルは、レボノルゲストレルにメチレン基を追加することで開発されました。これによりさらにプロゲストーゲン受容器との結合が強化され、プロゲストーゲンのより強い効果が得られるようになりました。一方で、アンドロゲン作用は軽減されています。
・第四世代:ジエノゲスト(Dienogest)
ドロスピレノンではアンドロゲン作用がなくなっているのが特徴です。
子宮内膜への作用があることから、子宮内膜症の治療に使用されています。
2) プロゲステロン(progesterone):天然型黄体ホルモン製剤
① プロゲステロン(progesterone)とは?
プロゲステロンは植物から作られた天然型黄体ホルモン製剤で、人工のプロゲストーゲンです。
プロゲステロンは、私たちの体内で作られたプロゲステロンと化学構造・分子的に同一であり、生体同一性ホルモンです。
プロゲスチンとプロゲステロンは、子宮内膜に同じような良い効果をもたらしますが、乳房や脳を含む体の他のすべての部分では、ほぼ反対の効果(副作用)があります。そのため、プロゲステロンはプロゲスチンよりも安全で、精神作用(気分)や髪への副作用も少なくなっています。
現在FDA(米国食品医薬品局)が承認した2つのプロゲステロン製品があります。プロメトリウム(Prometrium)は、経口カプセルであり、ピーナッツオイルに配合されています。プロゲステロンの膣座薬(ウトロゲスタン、クリノーネ)です。
② プロゲステロン(progesterone)の種類
・プロメトリウム(Prometrium):経口カプセル
体がプロゲストーゲンを十分に分泌していないときに、ホルモンを置き換えるために投与されます。妊娠しておらず閉経していない女性で数か月間止まっている場合、正常な月経(月経困難症)を回復するために使用されます。
プロゲステロンは、のぼせなどの閉経期の症状を軽減するためのエストロゲンとのホルモン補充療法の一部としても使用されます。子宮癌のリスクを軽減するために、プロゲステロンがエストロゲン補充療法に使用されることがあります。
・ウトロゲスタン、クリノーネ:膣座薬
ウトロゲスタン(Utrogestan vaginal capsules)もプロメトリウムと同様に月経困難症を治療するために使用されますが、剤形が異なり、膣座薬として使用されます。
ウトロゲスタンはまた、体内の天然プロゲステロンの不足により妊娠できない女性のための不妊治療にも使用されています。
ウトロゲスタンは、エストロゲンホルモン補充療法を受けている閉経後の女性の子宮内膜の異常増殖を防ぐためにも使用されます。
参照:
https://www.larabriden.com/the-crucial-difference-between-progesterone-and-progestins/