ダパグリフロジンは、「SGLT2(ナトリウム・グルコース共輸送体2)阻害薬」に分類される経口糖尿病治療薬です。腎臓でブドウ糖が再吸収されるのをブロックすることで、尿中に糖を排泄させ、血糖値を下げます。
もともとは2型糖尿病の治療薬として開発されましたが、その後の大規模臨床試験により、心不全(糖尿病の有無を問わない)、慢性腎臓病(CKD)においても、心血管イベントの抑制や腎機能の悪化を遅らせる効果が確認され、世界的に「心腎保護薬」としても重要な位置づけになっています。
日本では先発品として「フォシーガ錠(アストラゼネカ社)」が承認されており、1型糖尿病・2型糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病の治療に用いられています。

腎臓は、毎日およそ180gほどのブドウ糖を「原尿」として濾過していますが、通常はほぼすべてが再吸収され、尿の中にはほとんど糖が出てきません。
この再吸収に関わるのが、腎臓の近位尿細管に存在するSGLT2(ナトリウム‐グルコース共輸送体2)です。
ダパグリフロジンはこのSGLT2を選択的に阻害することで、
といった効果ももたらします。
インスリン分泌に依存しない機序のため、単独使用では低血糖を起こしにくい点もSGLT2阻害薬の特徴です。
(1)2型糖尿病
食事療法・運動療法で十分な効果が得られない2型糖尿病患者の血糖コントロール改善に用いられます。
HbA1cを0.5〜1.0%程度低下させることが一般的とされ、他の経口血糖降下薬(メトホルミン、DPP-4阻害薬など)との併用でさらに効果が高まることが報告されています。
(2)1型糖尿病
添付文書では、インスリン製剤と併用する場合に限り、1型糖尿病にも適応があります。
ただし、インスリン減量や過度な糖質制限、脱水、感染症などの条件が重なると糖尿病ケトアシドーシス(DKA)(※血糖が極端に高くない「正常血糖DKA」を含む)のリスクが高まるため、糖尿病治療に精通した医師の厳重な管理のもとでのみ使用されます。
(3)慢性心不全
心不全患者においてダパグリフロジンを投与すると、心不全による入院リスクの低下および心血管死のリスク低下が大規模臨床試験で示されています(DAPA-HF試験など)。
「慢性心不全」の適応が追加され、糖尿病の有無にかかわらず使用されます。
(4)慢性腎臓病(CKD)
ダパグリフロジンは、糖尿病性・非糖尿病性を問わず慢性腎臓病患者において、eGFR低下の速度を遅らせる効果、末期腎不全(透析)への移行リスクを下げる効果が示されており、CKDの新たな標準治療の一つと位置付けられつつあります。
SGLT2阻害薬は、1日に約60〜80g分のブドウ糖(約240〜320kcal)を尿中に排泄させるため、理論上は体重減少が期待できます。
実際の研究では、長期投与で平均2〜3kg程度の体重減少がみられる報告が多いですが個人差が大きく、中にはほとんど減らない、逆に体重が増える人もいます。
このため、ダパグリフロジンを「ダイエット薬」としてだけ使用することは推奨されておらず、糖尿病や心不全、腎臓病など医学的な適応がある患者において食事療法・運動療法と組み合わせることで、「血糖・体重・血圧・心腎リスクを総合的に改善する薬」として位置づけるのが一般的です。
※糖質制限ダイエットとSGLT2阻害薬の併用はケトアシドーシスのリスクを高める可能性があるため、自己判断での減量目的の使用はしないでください。必ず医師と相談してください。
| フォシーガ錠 |
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| 製造販売:アストラゼネカ社 |
| 日本を含む多くの国で承認されている先発品。5mg・10mg錠があり、糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病の治療に用いられます。 |
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ダパグリフロジンを含有したジェネリックは複数販売されており、個人輸入で入手できます。
| ダパベル | ダパリル | ダパカート |
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| 製造販売: インタス・ファーマ | 製造販売: インタス・ファーマ | 製造販売: カディラファーマシューティカルズ |
| ダパグリフロジン含有量: 1錠あたり5mg / 10mg | ダパグリフロジン含有量: 1錠あたり5mg / 10mg | ダパグリフロジン含有量: 1錠あたり10mg |
| 商品ページはこちら | 商品ページはこちら | 商品ページはこちら |
通常、成人にダパグリフロジンとして5mgを1日1回経口投与します。
効果が不十分な場合、状態を観察しながら10mg 1日1回まで増量することがあります。
インスリン製剤との併用に限り、5mg1日1回から開始し、必要に応じて10mg 1日1回へ増量できます。ただしケトアシドーシスのリスクが高いため、専門医の管理下で使用されます。
通常、成人に10mg 1日1回経口投与します。
eGFRが大きく低下している方では有効性・安全性に制限があり、慎重な投与判断が必要です。
服用は食事との関係にかかわらず、1日1回、できるだけ毎日同じ時間帯に飲むのが一般的です。
・性器カンジダ症などの性器感染症(外陰部のかゆみ・発赤・おりものの異常など)
・尿路感染症(膀胱炎など:排尿時痛、頻尿、残尿感)
・尿量増加、頻尿
・口渇、便秘、倦怠感など
糖を尿に排泄させるという性質上、性器や尿路の感染症が起こりやすくなる点があります。
以下のような症状が出た場合は、すぐに服用を中止して医療機関を受診してください。
・低血糖(特にインスリンやSU薬併用時)
冷や汗、手の震え、動悸、強い空腹感、意識がもうろうとするなど
・脱水・体液量減少
強い口渇、立ちくらみ、めまい、尿量の減少
・腎盂腎炎・敗血症
高熱、悪寒、腰背部痛、全身倦怠感
・ケトアシドーシス(正常血糖DKAを含む)
吐き気・嘔吐、食欲不振、腹痛、息苦しさ、異常なだるさ、意識障害など
・外陰部・会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)
陰部〜肛門周囲の強い痛み、赤み、腫れ、発熱など
症状に気づいたら自己判断で様子を見るのではなく、速やかに医療機関を受診してください。
次のようなケースで使用に注意が必要とされています。
・重度の腎機能障害、透析中の末期腎不全(血糖降下作用が期待できない)
・重度の脱水、急性感染症、重い手術前後など、全身状態が悪いとき
・ケトアシドーシスの既往、あるいは高リスク(1型糖尿病、インスリン分泌が乏しい2型糖尿病、極端な糖質制限など)
・頻回の尿路感染症・性器感染症のある方
・妊婦・妊娠の可能性がある方、授乳中の方
・高齢者(脱水・低血圧リスクが高い)
・インスリン製剤、スルホニルウレア薬、速効型インスリン分泌促進薬
→ 低血糖リスクが増えるため、用量調整が必要になることがあります。
・利尿薬(ループ利尿薬、サイアザイド系など)
→ 脱水・低血圧のリスクが増加する可能性があります。
・リチウム製剤
→ 尿中排泄が増え、リチウム血中濃度が低下する可能性が指摘されています。
現在服用している薬がある場合は、必ず医師・薬剤師に伝えたうえで使用の可否を判断してもらいましょう。
・尿量が増えやすいので、こまめな水分補給を心がけてください。
・高熱・下痢・嘔吐などで脱水になりそうなときは、自己判断で飲み続けず、早めに医師に相談してください。
・糖質制限を行う場合は、ケトアシドーシスのリスクを踏まえ、必ず主治医と相談のうえで行ってください。
ダパグリフロジンは2021年9月より日本でも糖尿病がない腎臓病患者に対する治療薬として保険適用が始まり、医療機関からの処方が可能となりました。しかし、医師からの処方箋がなければ一般薬局で購入することはできません。
ただし、ダパグリフロジンは個人輸入で海外からの購入が可能です。
ベターヘルスでは、ダパグリフロジンを含有する医薬品・ジェネリック医薬品の個人輸入代行も承っております。
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