EDと言えば年齢を重ねた男性が発症するものだと思われがちですが、20歳代や30歳代の若い男性でも、勃起障害(ED)に悩む男性は決して少なくありません。特に若い年代の勃起障害は結婚や妊活にも影響を与える、重大な問題です。
この記事では、EDの手術がどれほど有効なのか、手術時の注意やED治療薬との比較も踏まえて解説します。
EDの治療には一般的に薬物療法と手術の治療があります。薬物療法は主に、ED治療薬を服用する方法と、強制的に勃起をさせる注射があります。
EDの治療では、まず第一選択としてバイアグラやシアリス、レビトラなどPDE-5阻害薬の服用を行います。
薬の種類によって効果の発現までの時間や効果継続時間は異なりますが、ほぼ確実に効果を得ることが出来るとされます。
しかし、間違った使用をすると効果が得られない場合があったり、併用が禁止されている薬があるので服用時は注意が必要です。
血管拡張作用のある薬剤を注射して男性器への血流を増加させ、強制的に勃起をさせる方法です。
海綿体の異常がない場合、5分前後で効果が現れ、約2時間程持続します。ED治療薬を服用しても効果がなかった、または体質的にED薬を服用できない方に向けた治療法です。
基本的には病院で医師から注射してもらう必要がありますが、自己注射も可能です。
但し、4時間以上も連続して勃起したまま治らない持続勃起症になる恐れがあり、その場合は病院での緊急処置が必要となります。
現在、ED治療の手術では「陰茎プロステーシス移植手術」という方法が多く行われています。これはED治療薬や他の治療方法が使えない場合に行われる最終手段です。正常の勃起で血液が充満する陰茎海綿体の内部に、硬いシリコン製の棒や、膨らませたり収縮させたりできる液圧式で作動する器具を埋め込みます。この方法で、すでに30万人の男性が手術を受け、90%以上が満足していると報告されています。
また、新しいEDの手術方法として、血管拡張用カテーテルを用いて狭窄あるいは閉塞した血管を拡張させる治療方法や、血行再建手術によって血管を拡張する方法でも治療可能です。
ED治療手術は陰茎に直接器具を埋め込むため、EDを長期間に渡り解決することができます。また、好きな時にいつでもすぐに勃起させたり、継続できたり、自分の思いのままに勃起をコントロールできます。
しかし、EDの自然回復の可能性がなくなったり、場合によっては感染症や器具の故障などによって再手術が必要になるなどの欠点もあります。
メリット | デメリット |
---|---|
● EDを長期に解決できる ● いつでも勃起させることができる ● 雰囲気を壊さないで性行為ができる ● 好きなだけ勃起を継続できる ● 毎回の薬の購入費用が不要 ● 射精やオーガズムの障害にならない |
● 手術と治癒期間が必要 ● 自然回復の可能性がなくなる ● 感染や器具の故障などで再手術の場合がある ● 手術してくれる病院が限られている ● 保険適用がなく手術費用が高額 (手術費用52万円〜 + 材料費30万円〜+自費で全身麻酔のための術前検査) |
ED(勃起不全)治療に使用される薬剤、例えばバイアグラやシアリスは、多くの男性にとって日常生活の質を向上させる重要な方法です。しかし、これらの薬剤が持つ一定の副作用は、特定の状況下で潜在的なリスクを高める可能性があります。特に、手術を控えている場合、これらのED治療薬の服用は避けるべきと専門家は警告しています。
バイアグラやシアリスなどのED薬は、平滑筋をリラックスさせ、血管を拡張する作用があります。これによってペニスへの血流が増加し、勃起を促進します。しかし、この「血管拡張」作用が手術中の麻酔薬と相互作用し、予期しない問題を引き起こす可能性があるのです。
アメリカ看護師協会(AANA)によると、ED薬は麻酔やその他の手術中に使用される薬剤と組み合わされると、患者の血圧が危険なほど低下することがあります。このような低血圧は、手術中の合併症を引き起こし得るため、非常に危険です。
ED薬の効果は、薬によって持続時間が異なります。例えば、シアリスは服用後36時間まで効果が持続することがあります。そのため、手術前にこれらの薬を服用すると、その影響が手術当日にも残ってしまう可能性があります。AANAは、手術前24時間以上はこれらの薬の服用を避けることを推奨しています。
手術を予定している男性は、医師や手術チームにED薬の使用状況を必ず伝えるべきです。事前にこれらの情報を共有することで、医療チームは適切な麻酔計画を立て、手術中のリスクを最小限に抑えることが可能になります。
ED(勃起不全)治療薬の使用は、多くの男性にとってデリケートな問題です。プライバシーを重んじたいという気持ちは理解できますが、手術を控える際には、これらの薬の使用状況を麻酔担当者に伝えることが非常に重要です。なぜなら、ED薬が手術中の麻酔や他の薬剤と互いに作用し合うことで、患者の安全に直接的な影響を及ぼす可能性があるからです。詳しくは「ED(勃起不全)の治療法とは」を参照してください。
アメリカ看護師協会(AANA)のフアン・キンタナ会長は、ED薬を含むすべての医薬品の使用情報を医療チームに伝えることの重要性を強調しています。「患者は自分が服用している医薬品について、麻酔専門家に知らせることを恥ずかしいと感じるべきではありません」とキンタナ会長は述べています。麻酔専門家は、この情報をもとに安全で適切な麻酔計画を準備します。
医療提供者は患者のプライバシーと情報の機密性を最優先に考えています。すべての患者情報は厳格なプライバシー規定のもとで管理され、不必要な露呈はありません。「私たちは患者との信頼関係を大切にし、その信頼を尊重します」とキンタナ会長は付け加えています。
さらに、患者が服用している処方薬だけでなく、人参やショウガなどのハーブや栄養補助食品を含む補完的・代替医療についても情報共有が求められます。これらの天然成分も、麻酔薬や他の手術中に使用される薬剤と互いに作用することがあり、予期しない副作用を引き起こすことがあります。
20代や30代の男性も悩む勃起障害(ED)を治療する方法としては、薬物療法(勃起不全薬の服用と勃起不全注射)と手術(陰茎プロステーシス移植手術など)があります。
それぞれのED治療法にはメリット、デメリットがあります。自分に合った方法でED治療を行うことが、重要です。
ED治療薬 | 注射 | 手術 | |
---|---|---|---|
勃起力 | ◯ 服用する薬、タイミングによって異なる |
◎ 強制的に勃起させる |
◎ 器具で勃起させる |
勃起までの時間 | 15分〜1時間程度 | 5分程度 | 即時 |
勃起の持続時間 | ◯ 3〜36時間程度 |
△ 2時間程度 |
◎ 好きなだけ何時間でも |
治療の手軽さ | ◎ | × | × |
費用平均 | バイアグラ 1,200~1,300円 / 錠 シアリス 1,500円〜 / 錠 *ジェネリックの場合、1錠100円以下から購入することが可能。 |
陰茎海綿体注射 1回5,000円〜 10,000円程度+ 診察料+ 自己注射の指導費用 幹細胞培養上清液注射 1回50,000円〜140,000円程度 |
日帰り手術 52万円〜 + 材料費30万円〜+ 全身麻酔のための術前検査 |
副作用 | めまい、ほてり、胸やけ、鼻づまり、頭痛、潮紅など | 陰茎痛、持続勃起症(4時間以上)、海綿体線維化、不整脈、めまい、顔面紅潮など | 手術痕からの感染症、器具の故障など |
手術は、他の方法が効果がない場合の最終手段として用いられ、高い満足度を得ていますが、感染症や器具の故障など再手術が必要になるリスクもあります。また、ED治療薬の服用は手術前に避けるべきであり、手術の際にはその使用状況を医療チームに伝えることが重要です。このように、EDの治療は多岐にわたり、自分の状態に合った適切な治療法の選択が必要です。
参照
東邦大学医療センター:陰茎プロステーシス
勃起障害:MSDマニュアル
医療用医薬品 : シルデナフィル