テストステロンとは

テストステロンは、男性ホルモン(アンドロゲン)の中心的なホルモンで、主に男性の精巣で、少量が副腎や女性の卵巣でも分泌されます。

テストステロンは次のような働きを持ちます。

・男性生殖器(精巣・前立腺)の発育
・思春期の変化(声変わり・筋肉量の増加・体毛の増加など)
・性欲(リビドー)や勃起機能の維持
・筋肉量・骨量の維持
・赤血球産生の促進(貧血改善に関与)
・活力・気分・集中力などへの影響

年齢とともにテストステロン値は緩やかに低下していき、

・活力の低下
・性欲低下
・筋力低下
・体脂肪増加
・骨粗しょう症

などが問題となる場合には、テストステロン補充療法が検討されることがあります。
テストステロン分泌量

テストステロンの主な種類

医療で使われるテストステロン製剤には、以下のような種類があります。

テストステロン
経皮ジェル・パッチ、注射、経口製剤などさまざまな剤形があります。

テストステロン・ウンデカン酸エステル
超長時間作用型の製剤で、筋肉注射または特殊な経口製剤として使用されます。

テストステロン・シピオナート
長時間作用型エステルで、主に筋肉注射として用いられます。

テストステロン・エナント酸エステル
長時間作用型で、世界的にTRT(テストステロン補充療法)で最もよく使われるエステルの一つです。

テストステロン・プロピオン酸エステル
短時間作用型で、注射間隔が短いものの、血中濃度の変化が比較的なめらかです。

これらはすべて最終的には体内で「テストステロン」に変換されるプロドラッグですが、エステルの鎖の長さ、吸収のされ方によって、効き始めるまでの時間や効果が続く時間が変わってきます。

テストステロンの作用機序

テストステロンは、血液中を運ばれたあと、標的組織(筋肉・骨・前立腺・毛包・脳など)でアンドロゲン受容体(AR)に結合して働きます。

体内では、

・5α-還元酵素によりジヒドロテストステロン(DHT)に変換
→ より強力なアンドロゲン作用(前立腺・頭皮など)

・アロマターゼによりエストラジオール(E2)に変換
→ 骨密度維持や性腺機能、脳機能に関与

といった変換も起こり、テストステロンそのものだけでなく、「DHT」「エストロゲン」にも間接的に影響を与えるホルモンです。

テストステロン補充療法の主な効果・適応

医療としてのテストステロン製剤は、おもに以下のような目的で使用されます。

・男性の性腺機能低下症(男性更年期・LOH症候群を含む)
・低テストステロンによる症状の改善
・思春期遅発(男児)
・一部の乳がん(女性)
・トランスジェンダー男性(FtM)のホルモン療法

筋肉増強や美容目的だけでの使用は推奨されず、多くの国で医師の処方が必要な「処方薬」として扱われ、スポーツ競技ではドーピング規定の対象です。

テストステロン製剤の種類と特徴(比較表)

テストステロン製剤には、注射(筋肉注射・皮下注射)・経口カプセル・経皮ジェル/パッチなど、さまざまな形態があり、ジェネリック製剤もあります。
男性ホルモン補充療法(TRT)でよく使われる代表的な 5種類のテストステロン製剤 を、投与経路・作用時間(半減期)・メリット/デメリットごとに比較表でまとめています。

名称 / 形態商品画像主な投与経路作用時間・
半減期の目安
特徴
メリット / デメリット
テストステロン
(非エステル)
テストジェル - テストステロン (Testogel)経皮(ジェル・貼付剤)、筋肉注射、経口などパッチは約1日作用。
半減期は数時間程度
生理的な日内変動に近いテストステロン濃度を作りやすい。
一方で毎日の使用が必要で、塗布部位の管理や貼付の手間がかかる。
テストステロン・
ウンデカン酸エステル
テストサイン - ウンデカン酸テストステロン筋肉注射(IM)、特殊な経口カプセル注射:非常に長時間作用(10〜12週ごと投与)
経口:半減期が短く、1日2〜3回投与が必要
長時間作用型で血中テストステロン濃度が比較的安定しやすい。
ただし注射1回あたりの投与量が多く、まれに肺油微小塞栓(POME)などの有害事象に注意が必要。
テストステロン・
シピオナート
tcypion ティピオン - テストステロン シピオネート筋肉注射(IM)半減期:約7〜8日
1〜2週ごとに投与されることが多い
主に北米でよく使われる長時間型テストステロン注射製剤。
エナント酸エステルと作用はほぼ同等とされ、実臨床では「機能的にはほぼ同じ」薬剤として扱われることが多い。
テストステロン・
エナント酸エステル
筋肉注射(IM)、皮下注射半減期:約4〜5日
1〜4週ごと投与(安定化のため1〜2週ごとが多い)
世界的に最も広く用いられているTRT用テストステロンエステル。
価格と入手性のバランスがよく、投与間隔も比較的柔軟に調整しやすい。
テストステロン・
プロピオン酸エステル
テストップ - プロピオン酸テストステロン(Testop - Testosterone Propionate)筋肉注射(IM)、一部で頬粘膜など半減期:約0.8日
2〜3日に1回程度の注射が必要
立ち上がりが速く、短時間で抜ける短時間作用型テストステロン。
頻回の注射が必要で、注射部位の痛みが出やすいというデメリットもある。
いずれも最終的に体内で同じ「テストステロン」として働くものの、投与間隔、血中濃度の山と谷の大きさ、生活スタイルとの相性が違うため、どの製剤を選ぶかは医師と相談して決める必要があります。

テストステロンの投与方法の概要

以下はごく一般的な例であり、実際の用量・製剤選択は必ず医師が決定します。

①経皮製剤(テストステロン・ジェル/パッチなど)

  • 皮膚から吸収させるタイプ
  • 1日1回、決められた部位に塗布・貼付
  • 血中濃度の変動が少なく、「自然な日内変動」に近づけやすい
皮膚から他人(子ども・妊婦)に移らないよう注意が必要

②筋肉注射(テストステロン・エナント酸エステル/シピオン酸エステル/プロピオン酸エステル/ウンデカン酸エステル)

  • 上腕・臀部・大腿などに医師または看護師が深く筋注
  • エステルの種類により「数日〜数か月」作用が持続
  • 注射直後に血中濃度が高くなり、次第に減衰していくため、投与間隔によっては「ピークと谷」が大きくなることもある

③経口製剤(ウンデカン酸エステルなど)

  • 食事と一緒に服用することでリンパ路から吸収される特殊な製剤
  • 1日2〜3回の服用が必要なことが多い
  • 肝臓への負担を減らすよう設計されているが、血中濃度の安定性は注射や経皮製剤に比べてやや低いことも

テストステロン製剤の副作用

テストステロン補充療法には、次のような副作用が報告されています。

よく見られる副作用

  • ニキビ・脂性肌、体毛増加
  • 体重増加(むくみ・筋肉増加など)
  • 赤血球増加によるヘマトクリット上昇(血液が「濃く」なる)
  • 軽度の血圧上昇
  • 前立腺の容積増加による排尿困難の悪化
  • 精巣萎縮・精子数減少 → 不妊のリスク

重大な副作用(頻度は高くないが要注意)

  • 多血症(ヘマトクリットの高度上昇)による血栓症リスク増大
  • 心筋梗塞・脳卒中など心血管イベントリスクの増加が懸念されている報告もあり、ハイリスク例では特に注意が必要
  • 既存の前立腺がんの進行(前立腺がんそのものの発生リスク増加は議論中)
  • 重度の睡眠時無呼吸症候群の悪化
  • 女性・子どもへの曝露による誤った男性化(声変わり・多毛など)
異常な頭痛・息切れ・胸痛・強いむくみ・視力の変化などがみられた場合は、すみやかに医療機関を受診する必要があります。

テストステロン使用時の注意点

①原則として使えない、または慎重投与となるケース

以下のような場合、テストステロン補充は禁忌または非常に慎重な判断が必要とされています。
  • 前立腺がん・乳がんの方(男性)
  • 重度の心不全、最近心筋梗塞や脳梗塞を起こしたばかりの方
  • ヘマトクリットが高度に上昇している方(多血症)
  • 重度の睡眠時無呼吸症候群
  • 妊娠中・授乳中の女性(※女性での使用は特殊なケースのみ)

②併用に注意が必要な薬・状態

  • 抗凝固薬(ワルファリンなど)
    → テストステロンにより凝固能が変化し、用量調整が必要になる場合があります。
  • インスリンや経口血糖降下薬
    → インスリン抵抗性の変化により、血糖コントロールが変化する可能性。
  • ステロイドなど、他のホルモン製剤との併用
また、不妊治療中の男性では、テストステロン補充がかえって精子数を減少させることがあるため、原則として避けられます。

テストステロンを含む医薬品の購入方法

テストステロンエステル(テストステロン・ウンデカン酸エステル、シピオナート、エナント酸エステル、プロピオン酸エステルなど)を含む高用量製剤は、日本では医療機関で使用される処方薬、または未承認薬として扱われており、ドラッグストアで購入できる一般用医薬品はほとんどありません。ただし、これらの有効成分を含む海外医薬品は、個人輸入を通じて購入することが可能です。
ベターヘルスでは、アンドリオールなどのテストステロンのジェネリック医薬品の個人輸入のサポートも行っております。

参照:

テストステロン:wikipedia

男性におけるテストステロン値の低下は内臓脂肪増加と関連:日経メディカル

テストステロンの生理機能:NLM

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