
リオチロニンナトリウムは、甲状腺ホルモンのうちT3(トリヨードチロニン)を有効成分とする医療用医薬品です。T3は甲状腺ホルモン作用の活性型として、全身の代謝や臓器機能(心血管・消化管・脂質/糖代謝・体温調節など)に広く関与します。
甲状腺ホルモン補充療法の標準は一般にレボチロキシン(T4)ですが、リオチロニン(T3)は薬理学的に「効き始めが速い」「持続が比較的短い」という性質を持つため、患者背景や目的がはっきりした場面で慎重に使い分けられる薬です。
日本では、代表的な製剤としてチロナミン錠(5μg/25μg)が知られています。

T3は、標的細胞内で甲状腺ホルモン受容体に結合し、遺伝子発現を介して多様な生理作用を発揮します。臨床的には、甲状腺ホルモンが不足している状態(甲状腺機能低下症など)に対して、不足分を補って症状と検査値を適正化することが目的になります。
これらは、甲状腺ホルモン不足や甲状腺疾患に伴う症状・検査異常の改善を目的に使用されます。
チロナミン錠 5μg/25μg
1錠中:リオチロニンナトリウム5μgまたは25μg
リオサイトメル – リオチロニンナトリウム
リオサイトメルは、フィリピンの製薬会社ロイドラボラトリーズが製造する甲状腺ホルモン製剤で、有効成分リオチロニンナトリウム(T3)を補うことで代謝・エネルギー産生を促進し、甲状腺機能低下に伴う症状の改善をサポートするお薬です。
リオサイトメルは有効成分として、リオチロニンナトリウムを1錠あたり25mcg含有しており、1箱90錠入りです。

※ここでは一般的な考え方を示します。実際の用法用量は必ず医師の指示に従ってください。
添付文書上も「他の甲状腺ホルモン製剤より効果の発現が早く持続が短い」点を踏まえて投与すること、また甲状腺機能低下症や粘液水腫では少量から開始して漸増することが明記されています。
副作用の多くは、甲状腺ホルモン作用が過剰になったときの「医原性甲状腺機能亢進」として現れます。
「TSHは基準範囲でも体調が戻らない」という訴えは一定数存在し、T4単独ではなくT4+T3併用が議論されることがあります。
ただし、国際的なガイドラインでは、現時点で「代替療法が一貫して優れる」という強い根拠は確認されておらず、標準治療はレボチロキシン(T4)という整理が基本です。
一方で英国のコンセンサスでは、条件を満たした患者で限定的・慎重な試行を検討しうる一方、安全性(心血管・骨)と過量リスク、適正な評価手順の重要性が強調されています。
| 項目 | レボチロキシン(T4) | リオチロニン(T3) | T4+T3併用 |
| 位置づけ | 標準治療(第一選択) | 目的が明確な場面で選択される | 一部で検討されるが議論あり |
| 作用の立ち上がり | 比較的ゆるやか | 比較的速い | 速さは出やすいが調整が難しいことも |
| 血中濃度の安定性 | 安定しやすい | 変動しやすい(波が出やすい) | 変動リスクが上がりやすい |
| 安全性の論点 | 長期データが豊富 | 過量時の心血管リスク等に注意 | 適正用量・評価手順が重要 |
| 典型的な使い分け | 甲状腺機能低下症の基本 | 切替・特殊状況などで慎重に使用 | 症状が残る一部症例で、専門的管理下で検討されることがある |

甲状腺ホルモン製剤は、減量目的での使用が重大な健康被害につながり得ます。海外添付文書でも「肥満治療・体重減少目的に用いない」旨が明確に警告されています。
日本の添付文書では新鮮な心筋梗塞が禁忌です。また、狭心症や陳旧性心筋梗塞など重篤な心血管系疾患がある場合、投与が必要でも 少量開始・ゆっくり増量・最少必要量 が求められます。副腎皮質機能不全などがある場合も、先にそちらの補正が必要になることがあります。
抗凝固薬、糖尿病治療薬、交感神経刺激薬などは相互作用上の論点になり得るため、併用中の薬は必ず医師・薬剤師に共有することが重要です。
日本国内のリオチロニンナトリウム製剤(例:チロナミン錠)は処方箋医薬品です。ただし、リオサイトメルは個人輸入で海外からの購入が可能です。
甲状腺ホルモンは「不足を補う」一方で、「過量」になると全身へ影響が及ぶため、自己判断での開始・増減量は避け、医師の診断と定期フォローのもとで使用する必要があります。
リオチロニンナトリウムは、甲状腺ホルモンT3を補う薬剤で、作用発現が比較的速いという強みがある反面、過量のリスク管理が難しく、特に心血管系・骨代謝への注意が必要な薬でもあります。
標準治療としてはT4(レボチロキシン)が中心で、T3製剤は「必要性が明確な状況で、専門的に用量調整・モニタリングしながら使う」この基本姿勢が、品質の高い医療情報として最も重要なポイントです。
参照:
日本薬局方 リオチロニンナトリウム錠:一般財団法人日本医薬情報センター
チロナミン:kegg
甲状腺機能低下症におけるリオチロニン(T3)の使用:pubmed