様々な理由によりワクチン摂取ができない人、コロナ感染してしまった人にとって重症化を防ぐために、安全にかつ低価格で利用できる治療薬が必要とされています。
そこで安価に利用できる、古くから用いられている二型糖尿病治療薬メトホルミンが注目を集めています。米国で大規模に行われた研究でメトホルミン服用によるコロナ重症化、死亡のリスクへの影響が示されました。
・コロナ重症化を抑制したと報告された
・コロナ後遺症のリスクを下げる可能性が報告された
・メトホルミンは抗炎症および抗血栓作用がある
・メトホルミンは新型コロナウイルスの複製に重要とされるmTOR(細胞の増殖や代謝を調節する酵素)を阻害する
米国ミネソタ大学医学部のブラマンテ氏らが数千人規模でおこなった研究では、メトホルミンはコロナの重症化を抑制した可能性を報告しました。
2022年8月に発表された研究結果では、過体重・肥満の成人に対して、メトホルミンは救急診療部受診、入院または死亡を減らす統計結果が示されました。この発表では、メトホルミンの抗炎症作用、抗ウイルス作用、急性期の高血糖予防が影響していると考えられました。
さらに、2022年11月に発表された研究では、米国でコロナ感染が診断された成人の2型糖尿病患者6,626例に対しておこなわれ、メトホルミン、SU(スルホニル尿素)薬、DPP-4阻害薬と比較検討されました。結果、SU薬投与群に対しメトホルミン投与群では人工呼吸器装着および死亡のリスクが有意に低かったと示されました。ただし、DPP-4阻害薬とは有意差がなく、さらなる研究調査が必要と付け加えられています。
コロナ感染後の後遺症については、いまだ不明な点が多いですが、日本でも一部の人に長引く症状(罹患後症状)があることがわかっています。起き上がるのもつらい倦怠感や嗅覚の異常、原因はわからず治療薬も見つかっていないため社会問題となっています。
慶応大学の研究班によると、新型コロナ感染者のうち、何らかの後遺症が残ったのが1年後も3割にのぼったと発表されています。症状が長期化すると、不安や抑うつの傾向も強くなり、睡眠障害などに苦しむ人が増えていると言います。
WHO(世界保健機関)の定義では、コロナの後遺症とは、コロナ感染後に不調の症状があり、他の疾患による症状として説明がつかないもので、少なくとも2か月以上持続し、発症から3か月経った時点にもみられるとされています。
コロナ後遺症とは(WHO 世界保健機関) | |
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定義 | 新型コロナの発症から通常3か月間以内に出て、少なくとも2か月以上続く、ほかの病気の症状としては説明がつかない症状 |
主な症状 | 疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下など |
米国では、1,125人のコロナ患者を約10カ月間追跡して、その間に患者たちに毎月のアンケートで、医療機関でコロナ後遺症の診断を受けたかどうかを尋ねた調査を実施しました。
患者たちはメトホルミン、イベルメクチン、フルボキサミン、プラセボ群に分けられてそれぞれの効果を比較されました。結果では、メトホルミンを服用していない対照群では10.6%がコロナ後遺症を回答したのに対し、メトホルミンを服用している人はその割合が顕著に少なく6.3%が医療機関で診断を受けたと回答しました。すなわち、メトホルミン服用者は後遺症を患っている人が40%少ないことが示されました。
まだ1つの調査が治療効果の決定的な証明とは言えず、今後のさらなる研究が必要とされていますが、メトホルミンの抗ウイルス作用と抗炎症作用は、その効果が期待されています。
メトホルミンは、新型コロナウイルスの複製に重要とされるmTOR(細胞の増殖や代謝を調節する酵素)を阻害する働き、抗炎症・抗血栓作用があり、新型コロナ感染による重症化を抑制する可能性が期待されています。さらに、メトホルミンのコロナ後遺症への作用も今後の研究が望まれています。
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