1) 男性型脱毛症(AGA)としてのデュタステリドの作用機序
男性型脱毛症はアンドロゲン性脱毛症(AGA)とも呼ばれ、アンドロゲンという男性ホルモンは男性が年を取るにつれて脱毛する最も一般的な原因となっています。
ジヒドロテストステロン(DHT)はアンドロゲンの一種です。アンドロゲンは、体毛が濃くなったり、声が低くなったりなどの男性的だと特徴づけられる身体の発達に寄与するホルモンです。DHTはまた、男性型脱毛症を引き起こす原因となるホルモンです。
デュタステリドは5- α還元酵素阻害剤と呼ばれる医薬品のクラスの属するお薬で、I 型と II型 、 Ⅲ型のすべての5- α還元酵素を阻害します。
5- α還元酵素を阻害すると、男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)が減少し、その結果脱毛を食い止め、AGAを治療する効果をもたらすとされています。
AGA治療薬であるプロペシア(有効成分フィナステリド)は5- α還元酵素II型を阻害します。そのため、5- α還元酵素I 型が原因でAGAになっている方はデュタステリドを服用すると効果があらわれることがあります。
2)良性前立腺肥大症(BPH) 治療薬としてのデュタステリドの作用機序
男性ホルモンとしてはテストステロンが有名ですが、テストステロンは別のアンドロゲンであるジヒドロテストステロン(DHT)に変換されるまでAGAに影響しません。 DHTは前立腺細胞の成長も促し、思春期に陰茎が正常に成長するように作用しますが、高齢になった男性の良性前立腺肥大症(BPH)にも影響を与えます。
デュタステリドは5- α還元酵素を阻害することで、テストステロンがDHTへの変換されることを抑制します。良性前立腺肥大症の治療において、デュタステリドは循環しているDHTの量を減少させ、前立腺肥大の減少と尿の流れを改善することに繋がります。
3)デュタステリドを含む5- α還元酵素阻害薬と前立腺がんについて
2010年にイギリスの調査機関であるコクラン(Cochrane )が行った調査において、5- α還元酵素阻害薬の効果により、前立腺がんの発症リスクが25〜26%減少することがわかりました。
しかし同時に、5- α還元酵素阻害薬は、特定の重度の前立腺癌を発症するリスクを27%増加させることが報告されています。
すべての研究でこの現象が観察されたのではなく、前立腺がんによる死亡の全体的なリスクにどのように影響を与えるかを決定するために十分なデータは現状では足りないのが実情です。