
プリロカインは、アミド型局所麻酔薬に分類される有効成分です。日本では一般名として「プロピトカイン」の名称が用いられており、神経の興奮伝導を一時的に抑えることで、処置に伴う痛みをやわらげる目的で使用されます。
日本で承認されている代表的な製剤には、外用局所麻酔剤のエムラクリーム/エムラパッチ(リドカイン・プロピトカイン配合剤、佐藤製薬)と、歯科用局所麻酔剤の歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジ(プロピトカイン塩酸塩・フェリプレシン配合、デンツプライシロナ)があります。エムラクリームは2012年1月に製造販売承認を取得し、同年5月に発売されました。
これらはいずれも劇薬・処方箋医薬品として扱われる医療用医薬品であり、市販薬として薬局で購入することはできません。使用にあたっては医師・歯科医師の管理が前提となります。
プリロカイン(プロピトカイン)は、神経細胞の膜にあるナトリウムチャネルを可逆的に遮断し、活動電位の伝導を抑えることで局所麻酔作用を示します。歯科用シタネストの電子添文では、プロピトカイン塩酸塩は神経膜のナトリウムチャネルをブロックし、知覚神経および運動神経を遮断する局所麻酔薬と説明されています。
また、エムラクリームの電子添文では、リドカインとプロピトカインがいずれも細胞膜上のナトリウムチャネルを可逆的に阻害し、神経インパルスの発生・伝導を抑制することで麻酔作用を発現すると記載されています。
作用の流れ
局所に注射または塗布する
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神経膜のナトリウムチャネルを可逆的に阻害する
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神経細胞の脱分極・活動電位の伝導が抑えられる
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痛みの刺激が伝わりにくくなり、局所麻酔作用を示す

ここでは電子添文に基づく一般的な目安を紹介します。実際の用量・使用時間は、患者の年齢や状態、処置の内容に応じて医師・歯科医師が個別に判断します。自己判断で使用量や塗布時間を変更しないでください。

副作用は、塗布部位の局所反応から全身性の中毒症状まで幅があります。プリロカインで特に重要なのは、メトヘモグロビン血症です。
ショック・アナフィラキシー:不快感、口内異常感、喘鳴、眩暈、耳鳴、発汗、全身潮紅、呼吸困難、血管性浮腫、血圧低下、意識障害などが現れた場合は、直ちに使用を中止し、適切な処置が必要です。
局所麻酔薬中毒:血中濃度が上昇すると、不安、興奮、多弁、口周囲の知覚麻痺、舌のしびれ、ふらつき、聴覚過敏、耳鳴、視覚障害、振戦などが初期症状として現れ、進行すると意識消失、全身痙攣、呼吸停止に至ることがあります。心血管系では血圧低下、徐脈、心室性不整脈、循環虚脱、心停止などが記載されています。
メトヘモグロビン血症:プリロカインの代謝物であるo-トルイジンがメトヘモグロビンを産生し得るため、プリロカインで最も重要な副作用の一つです。血液の酸素運搬能力が低下し、チアノーゼ、めまい、頭痛、呼吸困難、錯乱などを起こすことがあります。チアノーゼ等が現れた場合は使用を中止し、重症例ではメチレンブルー投与などの処置が行われます。

1)メトヘモグロビン血症のある人には使用できない
エムラクリーム、シタネスト-オクタプレシンともに、メトヘモグロビン血症のある患者は禁忌です。プロピトカインの代謝物であるo-トルイジンがメトヘモグロビンを産生し、症状を悪化させるおそれがあるためです。本剤の成分やアミド型局所麻酔剤に過敏症の既往がある人も使用できません。
2)G6PD欠乏の人、新生児・乳児では特に注意
エムラクリームでは、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G-6-PD)欠乏患者はメトヘモグロビン血症が発現しやすいとされています。また海外では、特に低出生体重児、新生児、1歳未満の乳児で重篤なメトヘモグロビン血症が多く報告されています。
3)サルファ剤・硝酸薬・エステル型局所麻酔薬などとの併用に注意
サルファ剤、エステル型局所麻酔薬、硝酸薬などはメトヘモグロビン血症を起こすことがあるため、併用注意とされています。チアノーゼ等が認められた場合には、使用を中止して適切な処置を行います。
4)他のアミド型局所麻酔薬・抗不整脈薬との相加的な中毒に注意
メピバカイン、ブピバカインなどのアミド型局所麻酔薬や、リドカイン、キニジンなどのクラスI抗不整脈薬とは、中毒症状が相加的に起こるおそれがあります。アミオダロンなどのクラスIII抗不整脈薬とは心機能抑制作用が増強するおそれがあり、モニタリングが必要とされています。
5)外用剤は損傷皮膚・粘膜・眼・中耳に使わない
エムラクリームは、損傷皮膚や性器粘膜には使用しないこと、眼に入らないようにすること、中耳に入らないよう注意することとされています。眼については、動物試験で重度かつ持続性の刺激反応が報告されています。
6)歯科用注射では血管内注入・急速注入を避ける
シタネスト-オクタプレシンでは、ショックや中毒症状をできるだけ避けるため、患者の全身状態を十分に観察し、必要最少量にとどめ、注射針が血管内に入っていないことを確認しながら、できるだけゆっくり注射することが重要とされています。
7)代謝物o-トルイジンに関する注意
動物実験では、プロピトカインの代謝産物o-トルイジンの長期大量投与により肝・尿路上皮等に腫瘍が発生したとの報告があり、IARC(国際がん研究機関)でグループ1(ヒトに対して発がん性がある物質)と評価されています。これは通常の医療使用を直ちに否定するものではありませんが、電子添文に定められた用量・塗布時間を守るべき理由の一つです。
| 項目 | プリロカイン(プロピトカイン) | リドカイン | メピバカイン・ブピバカイン等 |
| 分類 | アミド型局所麻酔薬 | アミド型局所麻酔薬 | アミド型局所麻酔薬 |
| 主な作用 | ナトリウムチャネル遮断による神経伝導の抑制 | ナトリウムチャネル遮断による神経伝導の抑制 | ナトリウムチャネル遮断による神経伝導の抑制 |
| 日本での代表製剤 | エムラクリーム/エムラパッチ(配合剤)、歯科用シタネスト-オクタプレシン | キシロカイン等、エムラ配合剤 | 各種注射用局所麻酔剤 |
| 特徴・注意点 | 代謝物o-トルイジンによるメトヘモグロビン血症が特に重要 | 中枢神経系・心血管系の中毒症状など | 中枢神経系・心血管系の中毒症状など |
| 併用注意 | メトヘモグロビン血症を起こす薬剤、他の局所麻酔薬、抗不整脈薬 | 他の局所麻酔薬等 | 他の局所麻酔薬等 |
シタネストの電子添文では、動物実験において、浸潤・伝達麻酔によるプロピトカイン塩酸塩の局所麻酔効果はリドカイン塩酸塩とほぼ同程度であったとされています。どの局所麻酔薬が適しているかは処置の内容や体質によって異なるため、自己判断で選ばず、必ず医師・歯科医師の診断を受けてください。
日本では、エムラクリーム/エムラパッチ、歯科用シタネスト-オクタプレシンカートリッジは、いずれも劇薬・処方箋医薬品に区分される医療用医薬品です。医療機関での処置に用いられるか、医師の処方に基づいて使用されるもので、ドラッグストア等で購入することはできません。
海外では、プリロカイン塩酸塩の歯科用注射剤(Citanest Plain Dental 4%など)が承認されており、米国のDailyMedでは歯科における神経ブロックまたは浸潤麻酔に用いる局所麻酔薬として掲載されています。また、リドカイン・プリロカイン配合の外用剤(EMLAおよびそのジェネリック医薬品)も各国で広く使用されています。
海外で承認された医薬品は、個人輸入という形で取り寄せることが可能です。ただし、医薬品の個人輸入は自己責任が原則であり、特に局所麻酔薬は使い方を誤ると局所麻酔薬中毒やメトヘモグロビン血症につながるおそれがあります。持病がある人や薬を常用している人は、必ず事前に医師・歯科医師に相談してください。
| 商品名 | 有効成分含有量 | 製造元 | 生産国 | 商品詳細ページ |
![]() トップラップ(Toplap) | リドカイン2.5% プロピトカイン2.5% | キュラティオヘルスケア (Curatio Healthcare) | インド | 商品ページはこちら |
![]() プリロックス(Prilox) | リドカイン+プリロカイン配合クリーム 5% | ネオン・ラボラトリーズ (Neon Laboratories) | インド | 商品ページはこちら |
プリロカイン(プロピトカイン)は、ナトリウムチャネルを遮断して痛みの伝わりを抑えるアミド型局所麻酔薬です。日本ではエムラクリーム/エムラパッチなどの外用剤と歯科用注射剤に配合されており、レーザー治療や注射・歯科処置の痛みをやわらげる目的で使用されています。他の局所麻酔薬と比べて特に注意すべき点はメトヘモグロビン血症であり、電子添文に定められた用量・使用部位・塗布時間を守り、医師・歯科医師の管理のもとで適切に使用することが重要です。