
フルボキサミンは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ薬です。日本では1999年に発売され、先発品として「ルボックス」と「デプロメール」の2つの販売名で使われてきました。
日本で承認されている効能・効果は、うつ病・うつ状態、強迫性障害、社会不安障害の3つです。とくに強迫性障害では長く使われており、8歳以上の小児についても用法・用量が定められています。
一方、フルボキサミンはSSRIの中でも「飲み合わせ」にとくに注意が必要な薬です。肝臓で薬を分解する酵素の働きを抑えるため、一緒に使用できない薬や、用量調整が必要になる薬が多くあります。
このページでは、フルボキサミンの作用機序、一般的な使い方、副作用、飲み合わせを含む使用上の注意について、公的な医薬品情報をもとに紹介します
脳の神経細胞どうしは、「神経伝達物質」という物質をやりとりして情報を伝えています。セロトニンはそのひとつで、気分や不安などに関わる神経伝達物質です。
神経の末端から放出されたセロトニンは、役目を終えると「セロトニントランスポーター」という入口から元の神経細胞に回収(再取り込み)されます。
フルボキサミンは、このセロトニンの再取り込みを選択的に妨げることで、神経のすき間にあるセロトニンの作用を高めます。
電子添文では、セロトニン再取り込み阻害作用に比べて、ノルアドレナリンやドパミンの取り込みを阻害する作用はかなり弱く、その他の神経伝達物質の受容体への親和性もほとんどないとされています。
神経の末端からセロトニンが放出される
▼
通常はセロトニントランスポーターから回収される
▼
フルボキサミンがこの回収を選択的に妨げる
▼
神経のすき間でセロトニンの作用が高まる
▼
服用を続けるなかで神経回路が徐々に適応し、症状の改善につながる
フルボキサミンは、服用してすぐに気分を直接高揚させるタイプの薬ではありません。一定期間継続して使用しながら、治療効果を判断していく薬です。

[ここに用法・用量インフォグラフィックが入る想定:成人は1日50mgから開始→最大150mg・1日2回、小児(強迫性障害)は25mg就寝前から開始、という段階図]
以下は、日本で承認されているフルボキサミン製剤の電子添文に記載された一般的な用法・用量です。
実際の開始量や増量のペース、減量・中止の方法は、症状や年齢、併用している薬などをふまえて医師が判断します。自己判断で用量を変更したり、急に服用を中止したりしないでください。
通常、フルボキサミンマレイン酸塩として1日50mgから開始し、1日150mgまで増量します。1日量は2回に分けて服用します。
年齢や症状に応じて適宜増減され、電子添文では、患者ごとに慎重に観察しながら必要最小限の量となるよう調節することが求められています。
通常、1日1回25mgを就寝前に服用するところから始めます。
1週間以上あけて1日50mgに増量し、朝と就寝前の2回に分けて服用します。その後は必要に応じて1週間以上の間隔をあけ、1日25mgずつ増量し、1日150mgを超えないこととされています。
また、11歳以下の女児では、男性や12歳以上の女性に比べてフルボキサミンの血中濃度が高くなりやすいことが電子添文に記載されています。

電子添文で比較的頻度が高いとされている主な副作用は、
です。
このほか、めまい・ふらつき、頭痛、不眠、手のふるえ、不安感・焦燥感、下痢、嘔吐、食欲不振、発汗、体重増加なども報告されています。
また、
など、性機能やホルモンに関わる副作用も記載されています。
症状が気になる場合や日常生活に影響する場合は、自己判断で薬を中止せず、医師に相談してください。

次のような症状は、重大な副作用の初期症状である可能性があります。
このような症状が現れた場合は、速やかに医療機関へ相談してください。

抗うつ薬については、24歳以下の患者で自殺念慮・自殺企図のリスクが増加したとの報告があり、電子添文ではリスクとベネフィットを考慮して使用することとされています。
とくに飲み始めや用量を変更したときには、不安や焦り、イライラ、興奮、衝動的な行動、落ち着きのなさなどが現れることがあります。
本人だけでなく、家族など周囲の人も変化に気を配り、いつもと違う様子がみられた場合は、早めに医師へ相談してください。
フルボキサミンを急に減量したり中止したりすると、
などが現れることがあります。
これは薬物依存とは異なり、薬がある状態に神経系が適応しているため、急激な血中濃度の変化によって起こる反応です。
症状が良くなった場合でも、減量や中止の方法については医師と相談してください。
日本の電子添文では、次の薬を使用している場合、フルボキサミンとの併用は禁忌とされています。
MAO阻害薬を中止してからフルボキサミンを開始する場合は、2週間以上あける必要があります。
また、フルボキサミンからMAO阻害薬へ変更する場合には、少なくとも1週間以上あける必要があります。
チザニジンでは、フルボキサミンによって代謝が強く抑えられ、血中濃度が大幅に上昇することがあります。米国の製品情報では、併用によってチザニジンのAUCが平均約33倍に上昇した試験結果が記載されています。
また、海外ではメラトニンがサプリメントとして販売されていますが、フルボキサミンを服用している場合は、サプリメントであってもメラトニンとの併用を避ける必要があります。
フルボキサミンは、肝臓で薬を分解する酵素であるCYP1A2、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP3A4の働きを抑え、とくにCYP1A2とCYP2C19に対する阻害作用が強いとされています。
そのため、ほかの薬の血中濃度を高めることがあります。
併用に注意が必要な薬には、
などがあります。
たとえばテオフィリンでは、フルボキサミンによって体から排出される速さ(クリアランス)が約3分の1まで低下することがあり、電子添文にはテオフィリンの用量を3分の1程度に減量するなどの対応が記載されています。
ワルファリンでも血中濃度の上昇が報告されています。
ほかの医療機関を受診するときや、市販薬・サプリメントを使用するときには、フルボキサミンを服用していることを医師や薬剤師に伝えてください。
SSRIは血小板の働きに影響し、出血しやすくなることがあります。
とくに、
などを併用する場合には注意が必要です。
あざができやすくなったり、黒っぽい便が出たりするなど、出血が疑われる変化がみられた場合は医療機関へ相談してください。
フルボキサミンでは、眠気のほか、意識レベルの低下や意識消失などが起こることがあります。
電子添文では、服用中は自動車の運転など、危険を伴う機械の操作を行わないよう注意することとされています。
うつ症状に見えていても、背景に双極性障害がある場合、抗うつ薬の使用によって気分が高ぶりすぎる「躁状態」に転じることがあります。
過去に、普段より極端に気分が高くなったり、睡眠時間が短くても活動的になったりした時期がある場合は、治療を始める前に医師へ伝えることが重要です。
日本の電子添文では、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、フルボキサミンを投与しないことが望ましいとされています。
服用中に妊娠がわかった場合でも、自己判断で急に中止すると中止時の症状が現れる可能性があるため、速やかに医師へ相談してください。
妊娠後期にフルボキサミンを使用していた母親から生まれた新生児では、呼吸困難、ふるえ、筋緊張の異常、哺乳困難などが報告されています。
また、母乳中への移行も確認されています。授乳中は、治療上の利益と母乳栄養の利益を考慮して判断します。
日本で使われているSSRIは、いずれもセロトニンの再取り込みを抑える点では共通していますが、承認されている適応や、注意すべき副作用・飲み合わせなどに違いがあります。
| 項目 | フルボキサミン | セルトラリン | エスシタロプラム |
|---|---|---|---|
| 分類 | SSRI | SSRI | SSRI |
| 日本での主な適応 | うつ病・うつ状態、強迫性障害、社会不安障害。強迫性障害は8歳以上の小児にも承認 | うつ病・うつ状態、パニック障害、外傷後ストレス障害 | うつ病・うつ状態、社会不安障害 |
| 飲み合わせの特徴 | とくにCYP1A2・CYP2C19を強く阻害し、飲み合わせの注意が多い | 飲み合わせの注意はあるが、フルボキサミンより少なめ | 飲み合わせの注意はあるが、フルボキサミンより少なめ |
| 特徴的な注意 | チザニジン、ラメルテオン、メラトニンなどが併用禁忌 | セロトニン症候群、出血傾向など | QT延長など心電図への影響 |
| 急な中止 | 避ける(徐々に減量) | 避ける(徐々に減量) | 避ける(徐々に減量) |
SSRI同士を単純に「効き目が強い・弱い」で順位づけすることは適切ではありません。
どの薬を選択するかは、症状や診断、過去の治療への反応、副作用、併用している薬、年齢、妊娠の可能性などを総合的に判断します。
フルボキサミンの場合、とくに併用している薬の確認が重要です。
日本では、フルボキサミン製剤は処方箋医薬品として承認されており、医師の診断に基づいて処方されます。
先発医薬品には「ルボックス」と「デプロメール」があり、同じ有効成分を含む後発医薬品も販売されています。
海外では、国によって承認されている適応や用量が異なります。
たとえば米国の製品情報では、フルボキサミン錠の承認適応は強迫性障害です。日本で承認されている「うつ病・うつ状態」「社会不安障害」は、米国の同製品情報では承認適応に含まれていません。
また、小児の強迫性障害については、米国では8~17歳が対象とされ、1日の上限は8~11歳で200mg、12~17歳で300mgとされています。日本での上限150mgとは用量設定が異なります。
海外で承認されている用法・用量が、日本での使用方法をそのまま保証するものではありません。
日本国内で未承認の海外製品を、個人が自分で使用する目的で取り寄せることは、一定の範囲で個人輸入として認められています。
ただし、国内で承認されていない海外医薬品は医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があり、国内の医療機関で処方される医薬品とは取り扱いが異なります。
とくにフルボキサミンは、ほかの薬との飲み合わせの確認が重要な薬です。使用を検討する場合は、まず医療機関へ相談してください。
詳しい価格や在庫状況については、各商品ページをご確認ください。
フルボキサミンは、セロトニンの再取り込みを選択的に抑えるSSRIで、日本ではうつ病・うつ状態、強迫性障害、社会不安障害の治療に使用されています。
服用してすぐに効果を判断する薬ではなく、医師のもとで症状や副作用を確認しながら、用量を調整して使用します。
眠気や吐き気などの副作用のほか、フルボキサミンではとくに薬の飲み合わせに注意が必要です。チザニジン、ラメルテオン、メラトニンなど、併用できない薬もあります。
また、飲み始めや用量を変更したときの気分・行動の変化にも注意が必要です。服用を中止するときも、自己判断で急にやめず、医師と相談しながら徐々に減量します。